COLUMN

医療承継を考えるための視点

2026/10/11

谷口慎太郎が語る、医療経営とM&Aの原点②
なぜ、私はMATCH POINTをつくったのか

2009年6月、私は日本M&Aセンターに入社しました。

実は、最初から順調だったわけではありません。東京三菱銀行時代の同期が先に3人ほど入社していたこともあり、「自分も簡単に入れるだろう」と思っていました。ところが、一度不採用になっています。そこから再びチャンスをいただき、最終的に採用されました。少し格好のつかないところから、私のM&Aアドバイザー人生は始まりました。

入社後も、最初から医療専門だったわけではありません。地域金融機関を担当する、いわゆる地銀担当に配属され、新潟、静岡、長野などの金融機関を担当しました。食品、製造、警備、電気工事、建設など幅広いM&Aを経験し、普通の企業がどう経営され、評価され、承継されるのかを学べたことは、今でも大きな財産です。

そんな中、医療というテーマが再び私の前に現れます。

当時、日本M&Aセンターでも医療のM&A成約は年間に1件あるかないか。「そもそも病院や医療法人をM&Aの対象にしていいのか」という空気が残り、医療は神社や仏閣のように、売買するものではないという感覚がまだ強かった時代です。

ただ、私は前職で病院経営の現場を見ていました。資金、人材、赤字、後継者。多くの課題の一部をM&Aで解決できる可能性も知っていました。

そんな時、埼玉県のある銀行から病院案件の相談が入りました。本来は私の担当ではありませんでしたが、「そういえば医療に詳しいやつがいたな」という流れで、私に話が回ってきました。その案件を無事に成約できたことが転機になります。

「医療って、M&Aの仕事になるのではないか」

社内でも少しずつそんな空気が生まれ、私は他部署の医療案件の“よろず相談窓口”のような役割を担うようになりました。その後、会計事務所を担当するチームへ異動し、医療案件の受託と成約がさらに増えていきます。やがて「医療介護支援室」という専門組織が立ち上がり、部へ昇格し、人数も20名近い規模まで拡大しました。

自分が医療M&A市場をつくったなどと言うつもりはありません。ただ、ブローカー中心で曖昧な評価も残っていた世界から、会計やキャッシュフローで価値を考え、より適切な相手を探す世界へ変わっていく。その一端は担えたのではないかと思っています。

一方で、上場企業で仕事を続けるうちに、違和感も生まれました。

「いつクロージングするのか」「今期の売上に間に合うのか」。会社として当然の問いです。ただ、医療機関の経営者が抱える問題は、そんなに短い時間軸では動きません。医師が採れない、看護師が足りない、病床が稼働しない、設備投資をどうするか、家族は本当に継ぐのか。M&Aのずっと手前に、日々の経営課題があります。

私は次第に、「M&Aをする人を探す」のではなく、「もっと前から経営者に寄り添えないか」と考えるようになりました。

2020年、日本M&Aセンターを退職し、当時まだ非上場だったfundbookへ移ります。もっと自由に、自分が理想とする医療M&Aの形をつくりたいと考えたからです。共鳴してくれた仲間も一緒に来てくれました。

ところが、そこで最初に現実を知ります。日本M&Aセンター時代、自分たちがどれほど会社の看板と、長年築かれた地銀や会計事務所のネットワークに支えられていたか。案件は簡単には来ません。

そこで私たちは、単なる売買の打診ではなく、想定される経営課題から話を始める方法に切り替えました。DMは戦略提案書に変え、ダイレクトコールもその提案を中心にしました。結果として医療チームは20名を超え、私自身も取締役を務めました。

それでも、問いが残りました。

「そこまで言うなら、自分でやってみたらどうなんだ」

どれだけ経営課題を分析しても、どれだけ戦略を提案しても、最後に実行するのはお客様です。ならば、自分で医療機関を経営し、人を採用し、患者さんに選ばれる方法を考え、数字に責任を持ち、現場で起きる問題を自分の課題として解いてみたい。そう思うようになりました。

ちょうどその頃、fundbook創業者の退任という節目があり、私も役員を退任しました。そしてつくった会社がMATCH POINTです。

MATCH POINTを、単なるM&A仲介会社にするつもりはありません。M&Aは重要な手段ですが、目的ではない。人材、財務、マーケティング、組織、DX、AI。医療機関が抱える課題に、自分たち自身も当事者として向き合い、そこで得た知見をまた医療の世界へ還元していきたい。

22歳のときに抱いた、「良い医療と、良い経営は両立できないのか」という問い。銀行、投資、病院経営、M&Aと遠回りしてきましたが、振り返ればずっと同じ問いを追いかけてきたのだと思います。

これまで医療を外から見てきた。これからは、自分の課題として医療に向き合う。

MATCH POINTは、そのためにつくった会社です。

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